きらきらひかる









「あ、流れ星」

アビはついと元閥が指差した方向を見つめた。









【きらきらひかる】









だが時既に遅く、アビが空を見上げた時には綺麗なまでの暗闇とそれを彩る星たちがぽつぽつと輝いているのみだった。
一瞬唸り、ちらと己の腕の中でで空を見上げていた元閥を見る。

「ふふ、見れたか?」
「いや」

すると元閥も艶微笑を浮かべ、スルリとアビの腕から抜け出し、立ち上がった。
アビは「あ」と言う小さな呟きを零したが、元閥を解放する。
軽く背伸びをするような体勢をとり腕を伸ばす元閥を訝しげな目で凝視し、眉間に皺を寄せた。

「…何してるんだ?」
「いやな、これだけ沢山星が出ているのだから一つくらい取っても罰はあたらんだろう」
「取れるか」

なんとも馬鹿げたことを、不可能だと分かっていることを行おうとしている目の前の男にそっと溜息を吐き、アビはその後ろに立った。
真似をするかのように空に腕を伸ばし―――何かを掴んだ。

「アビ?」
「ホラ」

手渡されたのは――淡い色の小さな、小さな星。

「あ…こんぺいとう…?」
「小笠原さんが持っていたのを、少しな」

促されるようにこんぺいとうを口に運ぶ。じんわりとした甘さが口内に広がり、 元閥は目を閉じた。
まるで柔らかい月の光のような、甘さが。









―――にしても。

「…アビ。お前、いつこんな口説き方を覚えた?ん?」
「(びくぅっ)いや、どこでもない…!」









【終】